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『パラサイト 半地下の家族』感想

第72回カンヌ国際映画祭や第92回米国アカデミー賞をはじめ、世界各国で多数の賞を受賞した韓国映画『パラサイト 半地下の家族』を見ました。
非英語作品が米国アカデミー賞で作品賞を取ったのはのことで、しかも、アカデミー作品賞とカンヌの最高賞を同時に受賞した作品は実に65年ぶりとのこと。

世界の批評家が大絶賛しているという映画なので、一応、押さえておこうかなと。
それに、主演のソン・ガンホが好きな役者さんなので(^^)

約130分の映画を見た感想は―――。



ざっくりいうと、キム家とパク家の崩壊を描いた作品で、実はさらに、もう一組の夫婦の人生が大きく絡んできます。


『パラサイト 半地下の家族』感想_b0329868_16524809.jpg
登場人物が”勢ぞろい”しているポスターは秀逸。
白い目隠しがパク家、
黒い目隠しがキム家。
そして―――……。






キム家は、父親、母親、息子、娘の構成で、全員無職。息子と娘は大学受験に失敗して浪人中。食べる物にも事欠く生活で、半地下のアパートに住んでいます。

対してパク家は、父親、母親、娘(高校生)、息子(小学生)の構成で、豪邸住まい。
父親はIT企業の社長、母親は美人で、働いたことも家事も経験がなさそうな風。おそらく、実家も裕福で苦労したことがないためか、キム家の嘘に簡単に騙されてしまいます。娘は可愛らしい子で、キム家の息子に恋心を抱き、息子は過去の誕生日にトラウマを抱えるようなことを目撃しており、発達障害っぽい行動が目立ちます。

対照的な一家ですね。

パク家に、キム家の人々が、それぞれ家庭教師、運転手、家政婦として雇われていきますが、まず家庭教師として潜り込んだ息子の経歴は真っ赤な嘘で、偽名を名乗ります。
次に家庭教師として入り込んだ娘も偽名を使い、こちらも経歴詐称。しかも、かなり盛っています。
父親と母親は先任の運転手と家政婦を濡れ衣を着せて追い出して、まんまと後釜に座ります。一家は家族であることを

そして、曰くのパク家の息子の誕生日に、物語は急展開し、一気にカタストロフィーへ……。

伏線も多数あり、なかなかよい脚本だったと思います。
しかし、感動したりはしませんでした。
何だか淡々と終わってしまうのです。


そもそも、この悲劇が起きたのは、登場人物の思いやりのなさと、想像力の欠如だと私は思います(以下、少し内容に触れております)。


お金に不自由がなく、おそらく貧しさを経験したことのないパク一家が、キム家の人々のルサンチマンを惹起するような言動を無邪気にがしてしまうことが、悲劇の前提としてありますが、パク家の人々も、前任の運転手や家政婦を追い出し、「たった一つの警備員の仕事に大卒が500人も集まる」というセリフを自分で言っているくせに、追い出した彼らが失業してどんな目にあったかには思いが至りません。「きっと、もっといい所に就職しているさ」と。

そんな馬鹿な……。

前任の家政婦が秘密の地下室に隠していた”もの”のところにやって来たとき、同じような境遇にいるのだからと、キム一家が同情を示していたとしたら――おそらく、結末は大きく変わっていたことでしょう。


パク一家の主が評して、「運転手(キム家の父親)の臭いが気になる、地下鉄の臭いだ」と本人が聞いていないと思って(実は隠れて聞いていた)発言するシーンがありますが、彼を馬鹿にしている言葉と取れますが、そして、これが後の悲劇へとつながるキー・ワードとなるのですが、キム一家が必死に偽装しようとしていたことを見抜いていただけでもあります。



映画では、パク一家の無神経さが悲劇をもたらしたように描かれていますが、むしろ、私にはキム一家の方が悪であり、自ら原因を作ったように思えました。
社会構造的にパク一家が強者で、キム一家は弱者ですが、キム一家はそんな自分たちを偽装し、パク一家をまんまと騙したつもりで、自己否定することにより、自己の尊厳を捨ててしまっていたのではないでしょうか。
それを見抜かれたから、余計に腹が立ったのでは。


私は、人間は真実情愛に心を動かされるのだと思います。

その意味では、面白かったけれど、感動する作品ではありませんでした。




韓国映画だったら、『新感染』、『エンドレス 繰り返される悪夢』、そして、『タクシー運転手 約束は海を越えて』(光州事件を扱っています)の方が断然、泣けます。
親子の情愛や、愛するがゆえのためらいなど、ベタかもしれませんが、心が揺さぶられたくて、ドラマや映画が見たいと思う派なので。
古い人間なのかもしれませんが(^^;;










by utakatamahoro | 2020-12-31 05:05 | 映画・ドラマ | Comments(0)

2年間ロンドンに住んでいました。貧乏でも楽しめたロンドン。【自称】ニッチを愛するクリエイター。


by うたかたまほろ
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